一般講演17

RNA自己複製モデルへのRNA三次相互用モチーフの利用

○大森玲
京都大学医学研究科附属総合解剖センター
  RNAは遺伝子機能と触媒機能の両性質を併せ持つ生体分子であり、さらにRNA→DNAへの情報伝達を可能とする逆転写酵素が発見されている。このことから、生命の起源がRNAを基礎として発展し、後にDNAやタンパク質にその機能が取って代わられたと考える「RNAワールド仮説」が注目され、これまでに多方面の分野からこの仮説の真偽について検証がおこなわれている。その課題の一つとしてRNA自己複製能の検証が挙げられる。
   鋳型依存的な自己の増幅、つまり自己複製は生命の起源となった分子の重要な条件の一つと考えられている。しかし、それ自身のみで自律的に自己複製する生体分子は天然に存在せず、RNAも例外ではない。そこで、in vitroにおいて人工RNAを用い、“RNAの自己複製反応が可能か否か”について検証がおこなわれてきた。その検証アプローチの一つとして、RNA間のホスホジエステル結合反応を触媒する人工RNAリガーゼリボザイムを利用したRNA自己複製リボザイムモデルの人工構築がおこなわれ、その反応効率の向上も実現されている (1, 2)。このようなリボザイムを用いた自己複製モデルの今後の課題点として、変異を伴う分子進化と反応性(ターンオーバー効率)維持との両立が挙げられる。今回の発表では、自己複製リボザイムのモデル例を紹介するとともに、リボザイム活性に大きく寄与することが知られるRNA三次相互作用モチーフのRNA自己複製モデル構築への利用 (3,4)と、それがRNA分子進化にもたらすメリットについて考察したい。



References
1. Zaher H. S. and Unrau P. J. (2007) RNA 13. 1017-1026.
2. Lincoln T.A. and Joyce G.F. (2009) Science 323. 1229-1232.
3. Matsumura S. et al. (2009) FEBS lett. 583. 2819-2826.
4. Ohmori R. et al. (2011) J. Mol. Evol. 73. 221-229.