一般講演6 |
クラスIアミノアシルtRNA合成酵素を用いた全生物の分子系統解析 |
○古川龍太郎、横堀伸一、山岸明彦 東京薬科大学大学院生命科学研究科 細胞機能学研究室 |
全生物の系統関係やその共通祖先についての議論は続いている。Woeseら(1990; PNAS 87:4576-4579)は16S/18S rRNA を用いた分子系統樹を作成し、全生物を3つのドメインに分類した。一方、Lakeら(1992; Science 257:74-76)は EF-Tu/1α、EF-G/2 の一次配列のインデル (indel、挿入insertion と欠失deletion) に着目し、Eocyte (ほぼCrenarchaeota に相当する)は真核生物と共に単系統になり、メタン細菌や高度好塩菌(Euryarchaeotaに相当する)はその姉妹群になることを示唆した。この2つの提案は古細菌の単系統性について相容れず、論争が続いている。我々は生命の初期進化や全生物の共通祖先がどのような生物であったかを解明するため、様々なタンパク質遺伝子を用いた系統樹を作成し、全生物の共通祖先の系統学的位置の推定を行ってきた。また、祖先配列推定を行い、それを基にタンパク質を復元し、全生物共通祖先がどのような生物であったかを調べてきた。本研究では、クラスIaタイプのアミノアシルtRNA合成酵素(ARS) であるイソロイシルtRNA合成酵素(IleRS)、ロイシルtRNA合成酵素(LeuRS)、バリルtRNA合成酵素(ValRS)、メチオニルtRNA合成酵素(MetRS)を用いて分子系統樹を作成し、全生物の系統関係を議論する。これら4つの酵素は現存する全生物が持っているため3つのドメインの関係性が議論できると考えられる。 まず、4つのARSのアミノ酸配列(118種:真正細菌57種:古細菌23種:真核生物38種)をNCBIの配列データベースより収集し、各々の酵素単位で解析に適さない配列を除外し、データセットを構築した。MAFFTを用いてアラインメントを行い、最尤法プログラムであるRAxMLとベイズ法プログラムであるPhyloBayesを用いて各々の酵素の分子系統樹を作成した。その結果を報告する。 |
(Woese et al. 1990; PNAS 87:4576-4579) |
(Rivera & Lake 1992; Science 257:74-76) |