Viva Origino Vol.42 No.4
BIO-ORGANIC COMPOUNDS ADSORPTION BY CLAY MINERALS IN ORIGINS OF LIFE

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Hashizume Hideo


National Institute for Materials Science, 1-1 Namiki, Tsukuba, Ibaraki 305-0044, Japan
Fax: +81-29-860-4667
E-mail: HASHIZUME.Hideo@nims.go.jp
(Received 1 Aug, 2014, Accepted 30 January, 2015)




粘土鉱物と生体有機物の吸着と生命の起原

橋爪秀夫

(独)物質・材料研究機構

1. 粘土鉱物

生命の起原において粘土鉱物の役割は有機物の濃縮や高分子化の補助をした?ということである[1]。高分子合成や化学反応を進めるために、低分子有機物を濃縮する必要があり、その役割を粘土鉱物が行った。さらに粘土鉱物は触媒として高分子化の促進作用を補助した。本稿では粘土鉱物と生体有機物の吸着関係について、簡単に解説する。
  粘土鉱物の定義は、日本粘土学会編の粘土ハンドブックにAIPEA (Association Internationale Pour L’Etoude Des Argiles)鉱物命名委員会によると、「天然に産する微細粒子の鉱物で、水を加えると可塑性を示し、乾燥すると固結する。一般的には層状珪酸塩であるが、それ以外も含み、可塑性を持たない物質や有機物質も随伴することがある。」と書かれている[2]。つまり、天然の存在する微細粒子が粘土鉱物である。有機物も天然に産し、微細粒子であれば、粘土鉱物となる。
  粘土鉱物の分類については図1に示すような構造が主である。また、4面体層(T)と8面体層(O)の構造とT-OやT-O-Tの構造を図2に示す。T層とO層がT-O層となるものはカオリンや蛇紋石と呼ばれ、カオリンはT層にSi、O層にAlが入っている(図2、c)。鉱物内の電荷を保つためにO層には空サイトがある。カオリン鉱物はカオリナイト、デッカイトとナクトライトである。また蛇紋石はO層にMgが入っており、空サイトはない。蛇紋石はリザーダイト、クリソタリル、アンチゴライトである。T-O層の間には一般的に金属イオンや有機物は存在しない。またカオリン鉱物に類似で、層間に水分子があるのはハロイサイトと呼ばれる。一対の層がT-O-T層となっているものには、パイロフィライトやタルクがある。パイロフィライトはO層にAlが配位し、T層にSiが配位する(図2、d).T-O-T層の間には水分子や金属イオンはない。金属イオンがT-O-T層の間にあるものは雲母と呼ばれる。白雲母、イライトなどがある。雲母の層間イオンは簡単に交換しない。水分子も入らない。T-O-T層の間に八面体層があるものがあり、クロライトと呼ばれている。T-O-T層間に金属イオンがあり、水分子が湿度の変化により,層から出入りするものは、スメクタイトと呼ばれ、モンモリロナイトやバイデライト、サポナイトがある。また、類似の特徴を示すが、水分子の湿度に対する変化が異なるものはバーミキュライトと呼ばれ、スメクタイトとは区別されている。トンネル構造を持つセピオライトやパリゴスカイトがある。リボンあるいは針状構造と呼ばれ、リボン状のT-O-T層のT層が斜め上あるいは下のT層の酸素を共有し、トンネル空間には水分子がある。セピオライトはO層にMgが配位している。パリゴスカイとはO層にはMgあるいはAlが配位し、セピオライトとパリゴスカイトではリボンの幅が異なり、性質も異なる。チューブ状ではイモゴライト、球状ではアロフェンがある。イモゴライトは外壁のO層にAlが内壁のT層にSiが配位する。アロフェンは外壁のO層にAlが内壁のT層にSiが配位する。イモゴライトとアロフェンは火山灰の風化によるもので、産地などはほぼ同じである。アロフェンには穴があり、水分子などが出入りが可能である。粘土鉱物の定義から、その他酸化物や水酸化物、非晶質物質など様々粘土鉱物と呼ばれるものがある[2]。


Fig. 1 Diagram showing the basic structure of clay minerals.

Fig. 2 Tetrahedral (a) and octahedral (b) sheet structures, and T-O (c) and T-O-T (d) layer strucutes. (e) Octahedral sites of kaolinite occupied by Al cations. There are two types of the kaolinite structure showing a mirror image (seeing the octahedral sites from the arrow direction in c).

2. 粘土鉱物とアミノ酸の吸着

 幾つかのアミノ酸とモンモリロナイトの間の吸着等温線の作成は、Greenland et al.によって行われている[3, 4]。吸着等温線は平衡濃度が大きくなると、吸着量も多くなり、最終的に飽和吸着する。モンモリロナイトの層間イオンの相違で、アミノ酸の吸着量の違いが生じている。また、彼らはグリシンのモノマーからテトラマーを様々な層間イオンのモンモリロナイトで吸着を行い、オリゴマーはモノマーよりも吸着等温線が濃度に対して急傾斜であることを示した。また、Hedge and Hareはモンモリロナイトとカオリナイトに同じ濃度の17種類のアミノ酸による吸着を行い、吸着量の違いを調べた[5]。酸性アミ酸や塩基性アミノ酸はカオリナイトに良く吸着した。モンモリロナイト表面は負電荷のため塩基性アミノ酸を良く吸着する。我々はアロフェンを用いて、アラニンの吸着を行った[6]。アロフェンの表面電荷はpHが6付近で0、pH6以下で正電荷、pH6以上で負電荷になることから、吸着等温線はpH4、6、8で作った。吸着等温線は濃度が高くなるに比例し多くなり、ある濃度で吸着量が一定になり、濃度に対して吸着量は飽和する。しかしアロフェンの場合、さらに濃度が高くなると、吸着量が再び増加する。この吸着等温線について、アロフェンは一般に数個から十数個の粒子が集まった凝集体として水溶液中に存在し、低濃度では凝集体の周りにアラニンが吸着し、吸着飽和となるが、さらに濃度が増すと、凝集体の間隙にもアラニンが吸着し、凝集体の一部が壊れ,見かけ上、表面積が大きくなるためと説明した。pHの依存では吸着等温線はpH6>8>4となる。これはpHによるアラニンの解離とアロフェンは表面電荷の変化が関係している。
  アミノ酸には光学活性があり、無生物的に合成するとDとL体が1:1になるが、生物では主にアミノ酸はL体である。アロフェンには構造欠陥による穴があり、構造欠陥部分にはキラルな構造があると言われる。アミノ酸のアロフェンによる光学活性体の分離が可能かどうかを調べた[7]。アロフェンの化学組成は Al/Si比が1〜2と変化する。化学組成の違いが穴付近の構造に影響を与えるとすると、アミノ酸の吸着に影響を与えると考えられる。3地域のアロフェンはAl/Si比が異なることからそれらを用い、アラニンのDとL体の単量体と2量体による吸着量の違いを調べた。図3(a)に示すように、単量体ではDとL体の吸着量の違いは見られなかったが、2量体ではニュージーランド産にTe KuitiはL体を多く吸着した(図3(b))。天然産を用いていることから、アロフェン合成時に天然有機物の影響を受けていないと言えないため、現在のところアロフェンによるDとL体の吸着分離は難しいと思われる。アロフェンの穴付近の構造を知るために単結晶構造解析を行う方法を確立すると共に、大量の高純度合成をする方法を探す必要がある。

Fig. 3 (a) Isotherms for adsorption of D-, L-alanine by Kanuma, Kitakami and Te Kuiti. (b) Isotherms for adsorption of D-alanyl-D-alanine and L-alanyl-L-alanine by three allophanes. Al/Si ration of Kanuma, Kitakami, and Te Kuiti is 1.4, 1.5 and 1.6, respectively.

 カオリナイトは石英のように右と左の結晶構造を持つ。カオリナイトは図1や図2(c, e)でAlの占める8面体サイトに空サイトがあり、その空サイトの位置により2つの鏡像体の構造を取る。しかしながら、石英と同様に2種類のカオリナイトを分離するのは難しい。その他の粘土鉱物(例えば、モンモリロナイトなど)によるアミノ酸や糖類のDとL体の分離は行われており、成功例や不成功例など、粘土鉱物を使った分離ができるのかどうかは分かっていない[8, 9]。

 

3. 粘土鉱物と核酸とその構成物との吸着

 モンモリロナイトと核酸塩基の吸着関係、特にpHによる吸着量の変化はLailach et al. によって調べられ、その後も層間イオンを種々な金属イオンに交換して行われている[10, 11]。我々はアロフェンとアデニン、アデノシン アデノシン一リン酸、リボースの吸着等温線をpH4、6、8で作成した[12]。pHにかかわらず、アデニンとアデノシンの吸着量はほぼ同じであり、吸着にリボースは影響を与えていない。アデノシン一リン酸はアデニンやアデノシンと比較すると非常に多くアロフェンに吸着する。リン酸が強く吸着に影響を与えている。pHの違いではアデニンやアデノシンはpH8がpH4や6よりも吸着等温線は高いように思われる。一方で、アデノシン一リン酸の吸着において、吸着等温線はpH8でpH4や6よりも低くなった。これはリン酸の解離が影響していると考えられる。
  層間イオンをMgに交換したモンモリロナイトとアデニンやシトシン、ウラシル、リボース、リン酸の吸着等温線を作成した[13]。アデニンがほかの核酸塩基に比べて吸着等温線は高く、ついでシトシン,ウラシルとなった。リボースは殆どモンモリロナイトには吸着しなかった。一方で、リン酸はラングミュラー型の吸着等温線を示した。リン酸の吸着サイトはモンモリロナイトの端面と考えられるため、ある濃度を超えると吸着が飽和するためである(図4)。

Fig. 4 Isotherms for adsorption of adenine, cytosine, uracil, ribose and phosphate by Mg–montmorillonite.

4.おわりに

 有機物と粘土鉱物の吸着関係は様々あり、陰イオンを層間にもつハイドロタルサイトと核酸等の吸着などの例がある[14]。また、環状の有機物などは宇宙空間や隕石中にも存在することから、環状の有機物と粘土鉱物の吸着などの研究もある[15]。
  粘土鉱物には触媒能があり、アミノ酸からペプチド、ヌクレオチドからポリヌクレオチドなどの高分子化の研究はたくさんある[16, 17]。最近では、粘土鉱物に限らず様々な造岩鉱物(火成岩を構成する鉱物)などと生体有機物との相互作用なども調べ始められている。
  生命がどのようにして発生したかは、地球のあるいはもっと大きく太陽系や宇宙の始まりからの進化、元素の合成から、様々な物質の進化の中で無機物と共に有機物、生体有機物の合成を考えて見るのが良いのではと考えている。

参考文献

  1. Bernal, J., The physical basis of life.; pp364 London, Routledge and Kegan Paul, 1951.
  2. 日本粘土学会編, 第1章 粘土の定義、第2章 粘土鉱物の性質 粘土ハンドブック, 第3版 11-112, (2007)
  3. Greenland, D. J., Laby, R. H., and Quirk, J. P. Adsorption of glycine and its di-, tri-, and tetra-peptides by montmorillonite, Trans. Farad. Soc., 58, 829-841(1962)
  4. Greenland, D. J., Laby, R. H., and Quirk, J. P. Adsorption of amino-acids and peptides by montmorilloniteamd illite, Trans. Farad. Soc., 61,  2024-2035 (1965)
  5. Hedge, J. I., and Hare, P. E. Amino acids adsorption by clay minerals in distilled water, Geochim. Cosmochim. Acta,, 51 255-259 (1987)
  6. Hashizume, H., and Theng, B. K. G. Adsorption of DL-alanine by allophanes: Effectof pH and Unit particle Aggregation, Clay Minerals, 34, 233-238 (1999)
  7. Hashizume, H., Theng, B. K. G., and Yamagishi, A. Adsorption and discrimination of alanine and alanyl-alanine enantiomers by allophane, Clay Minerals, 37, 551-557 (2002)
  8. Siffert, B., and Naidja, A. Stereoselectivity of montmorillonite in the adorption and deamination of some amino acids, Clay Minerals, 27, 109-118 (1992)
  9. Friebele, E., Shimoyama, A., and Ponnamperuma, C. Adsorption of amino acid enantiomers by Na-montmorillonite, Origin. Life, 11, 173-184 (1981)
  10. Lailach, G. E., Thomposn, T. D., and Brindley, G. W. Adsorption of pyrimidines, purines and nucleosides by Li-, Na-, Mg- and Ca-montmorillonite (Clay – organic studies XII), Clays Clay Minerals, 16, 285-293 (1968)
  11. Lailach, G. E., Thomposn, T. D., and Brindley, G. W. Adsorption of pyrimidines, purines and nucleosides by Co-, Ni-, Cu- and Fe(III)-montmorillonite (Clay – organic studies XIII), Clays Clay Minerals, 16, 295-301 (1968)
  12. Hashizume, H., and Theng, B. K. G. Adenine, adenosine, ribose and 5’-AMP adsorption tp allophane, Clays Clay Minerals, 55, 599-605 (2007)
  13. Hashizume, H., van der Gaast, S., and Theng, B. K. G. Adsorption of adenine, cytosine, uracil, ribose, and phosphate by Mg-exchanged montmorillonite, Clay Minerals, 45, 469-475 (2010)
  14. Swadling, J. B., Coveney, P. V., and Greenwell, H. C. Stability of free and minerals-portected nucleic acids: Implications of the RNA world, Geochim. Cosmochim. Acta, 83, 360-378 (2012)
  15. Hashizume, H., Adsorption of aromatic compounds in water by talc, Clay Science, 14, 61-64, (2009).
  16. Lahav, N., White, D., and Cheng, S. Peptide formation in prebiotic era: Thermal condensation of glycine in fluctuating clay environments, Science, 201, 67-69 (1978)
  17. Ferris, J. P., Hill Jr., A. R., Liu, R., and Orgel, L. E. Synthesis of long prebiotic oligmers on mineral surfaces, Nature, 381, 59-61 (1996)

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