Viva Origino Vol.40 No.4
「生命の起原に魅せられて」ミニシンポジウムから

Down Load this article


横堀 伸一
東京薬科大学・生命科学部・応用生命科学科・極限環境生物学研究室
(旧・分子生命科学科・細胞機能学研究室)

     去る2012年12月22日、東京薬科大学において、「生命の起原に魅せられて」というタイトルでミニシンポジウムを開催した(図1:ミニシンポジウムの案内)。
 このミニシンポジウムは、次の様な経緯で行われた。  一点は、清水先生の遺伝暗号の起原に関するC4N仮説が論文として発表されたのが、1982年であり(Shimizu, M., 1982. “Molecular Basis for the Genetic Code.” Journal of Molecular Evolution 18: 297–303)、2012年はC4N仮説30周年であったということである。C4N仮説とは、tRNAのアンチコドンを構成する塩基とtRNAの識別塩基(tRNAの3’末にあるいわゆる”CCA”末端の一つ前の塩基で有り、tRNAHisの場合を除いて塩基対を作らない。アンチコドンと共に、多くのアミノアシルtRNA合成酵素が認識する塩基である。)の4つの塩基と対応するアミノ酸の間で、鍵(アミノ酸)と鍵穴(4塩基)の関係性のような立体構造の対応があり、それが遺伝暗号の起原に関わる、とする仮説である。遺伝暗号の起原を核酸とアミノ酸の立体化学的な検討から説き起こす、というこの仮説は、現在でも、さらに検討する必要がある仮説であると考えている。
 もう一点は、2012年の春に、清水先生が満80歳を迎えられたということである。清水先生は、宇宙科学研究所を定年退官された後も、生命の起原に関わる進化に関する研究を進められてこられた。現在も、東京薬科大学の私どもの研究室で、客員研究員として、研究を進められている(常時来られているわけではないが)。しかも、そのご研究は、理論的な研究と言うよりも、化学(または生化学)実験である(!)。私どもの研究室でも(そして学内でも)、特に学生には、清水先生がどのような方で、どのようなことを研究されているのか、あまり知られていない。是非清水先生のご研究を伺う機会を作れないか、考えていた。それによって、研究の楽しさ、といったものが私たち大学の現役の教員からとは別の形で伝われば、とも考えていた。
 私自身は、清水先生と初めてお会いしたのは修士課程の学生として、東京工業大学の長津田キャンパス(現・すずかけ台キャンパス)にあった渡辺公綱先生の研究室に所属するようになったときである。相模原の宇宙科学研究所では、生化学的な研究を行う事のできるラジオアイソトープ実験施設が無かったので、清水先生とその研究室の方々は東京工業大学の長津田キャンパスに実験に来られていた。また、その年(1989年)は前年に発表されたTaq DNAポリメラーゼを使用したPCR (Polymerase Chain Reaction)が使われ始めた年で有り、非常に初期にPCRを導入された清水先生の研究室まで、PCRを行うために宇宙科学研究所にお邪魔したこともあった。
 このような経緯も有って、私が渡辺研究室に所属した同時期に清水先生の研究室に修士学生として入った田村浩二先生と検討して、このようなミニシンポジウムを開催し、清水先生の現在のご研究を伺う機会を作った次第である。
 清水先生に縁の深い方に今回のミニシンポジウムにご講演をお願いした。予定された講演者の方々のうち、郷道子先生は体調不良ということでご参加は叶わなかったが、田村浩二先生、山岸明彦先生、渡辺公綱先生、姫野俵太先生、大島泰郎先生、そして清水幹夫先生の講演が行われた。まさにミニシンポジウムのタイトルである「生命の起原に魅せられて」の通り、生命の起原に関わる様々な研究について、清水先生との関わりも含めて、お話し頂いた。それぞれのお話の内容については、講演された先生方ご自身による解説に譲りたい。
 また、田村先生、大島先生、郷先生と清水先生とのご縁については、それぞれの先生方の稿に詳しい。その他の先生方について、簡単に清水先生とのご関係を記すと、まず、姫野先生は助手として、宇宙科学研究所時代に清水先生と研究を進められた。また、渡辺先生は故三浦謹一郎先生と共に、C4N仮説の検証実験をされた。そして、山岸先生は東京薬科大に清水先生の研究場所を提供し、渡辺先生と共に時に研究に関して清水先生と議論を交わしている。
 会場である東京薬科大学の教員や学生の方々の他、遠方から参加された方も多く(北は青森県から西は愛媛県まで)、ミニシンポジウムは盛況のうちに行われた。ご講演に対する質疑も非常に活発であり、「生命の起原」の広がりを強く感じさせるものであり、参加されたすべての方に感謝したい。
 清水先生を初めとするご講演された先生方、ことに清水先生(そして大島先生や渡辺先生)の研究を正に楽しむ、という姿勢を、忘れないようにしたいと思う。


図1.ミニシンポジウムポスター


図2. ミニシンポジウムの様子

姫野俵太先生(弘前大学)

田村浩二先生(東京理科大学)

大島泰郎先生(東京工業大学名誉教授、東京薬科大学名誉教授、共和化工)

山岸明彦先生(東京薬科大学)

清水幹夫先生(宇宙科学研究所名誉教授)

渡辺公綱先生(東京薬科大学・客員教授、東京大学名誉教授)
 




PAGE TOP
CLOSE THIS PAGE