一般講演13

自然の非対称性と生命ホモキラリティ

○高橋淳一
日本電信電話(株) 先端技術総合研究所
  地球上生体有機物のホモキラリティ(L-アミノ酸・D-糖優位)の起源を、自然が根源的に有する対称性の破れとの関連から解明する目的で、高エネルギー粒子加速器を用いた地上模擬実験および第一原理量子化学計算を用いた模擬計算により、以下の諸仮説の検証を進めている。
  現在提唱されている仮説のうち最も直裁にアストロバイオロジーの文脈で語られるのがCosmic Scenario (Fig.1) である。『高密度分子雲中の星間塵表面に凍結吸着した星間分子に宇宙線や紫外線が照射され前生物的に有機物が生成される際、中性子星の円偏光シンクロトロン放射や星形成領域の円偏光散乱光により有機物分子の光学異性体(D-/L¬-体)間に対称性偏りが生じ、隕石や彗星と共に運ばれ偏りが増幅されホモキラリティの状態となった。』
  これに対し理論物理学者が提唱するのは、分子レベルではエネルギー的に等価であるはずの光学異性体間にも、素粒子レベルでは僅かなエネルギー差が存在するというIntrinsic Scenarioである。『物質間の相互作用の一つである弱い相互作用における「パリティ非保存に基づく対称性の乱れ」は、素粒子レベルだけでなく巨視的物質にも固有の特性として顕れる。弱い相互作用(Z0ボゾン媒介)を考慮してアミノ酸分子の固有エネルギーを計算するとD-体よりL-体の方が安定で、これがL-アミノ酸優位ホモキラリティの直接的原因である。』 
  さらに理論宇宙物理学者が提案するのは、天体起因の放射線はスピン偏極しており、有機物分子に生成する対称性偏りも一意的に決まるとするCosmic Intrinsic Scenarioである。『超新星爆発や中性子火球からのベータ崩壊電子や電子ニュートリノは、弱い相互作用(W±ボゾン媒介)におけるパリティ非保存により一方向にのみスピン偏極しており、ヘリシティが負(左巻き螺旋)のみである。これらが前生物的有機物分子に作用すれば、必然的に光学異性体間の対称性偏りの方向まで定まり、これがL-体アミノ酸優位ホモキラリティの原因である。』


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